口だけの人から「仕事を実行できる」社員へ育てる。能力開発の5段階に基づく人材育成

「やると言ってやらない人」

”やると言ってやらない人”、”口だけの人”。
あなたの職場にも居ませんでしょうか。

口だけは威勢が良く自信満々で、その通りにしてもらえたらこの上なく頼もしいのですが、
残念ながら実際にはなかなか仕事に反映してくれません。

そのうえ本人も実力が無いことを自覚している場合、
多くは「不安」や「焦り」と言ったネガティブな感情から無意識に不機嫌な振る舞いをとってしまうこともあるため、
結果的に周りの社員の生産性まで下げる要因にもなります。

今回は、このなかなか行動してもらえない人達の心理と、その解決法に迫ってみましょう。

能力開発の5段階

人間が物事を習得し、スキルアップをするには「知る」「分かる」「やる」「できる」「与える」
全部で5つの段階があると言われています。

1.知る

本や人から情報を得て存在を知る、知識を得る

この時点ではまだ何も分かっていないため、ひたすら情報収集とインプットに専念します。

2.分かる

得た情報を頭の中で整理し、理解する

先の段階で集めた断片的な多くの情報を繋ぎ合わせ、自分の力で全体像を把握します。

3.やる

学んだ内容に沿って実際に行動してみる

経験を経ることによって、頭の中のイメージと実践活動のギャップを埋めていきます。
知識で得たことと実際に行動することは違うので、
「分かる」から「やる」段階のギャップを埋める事は容易ではありません。

4.できる

試みが成功する

ここに至るには安定して成功できるよう、できるだけ多く回数を重ねて実践する必要があります

5.与える

また次の人に「知る」「分かる」段階を提供し、知識を分かち合えるようになる

安定して成功するだけでなく、知識面でも詳細まで理解している必要があります。
そのため、はじめから「与える」段階を目標にすることで、
学習過程でもより着実に知識と経験を得ることができるようになります。

「口だけの人」の問題点

さて、先ほどの”やると言ってやらない人”。
この能力開発の5段階に基づいて彼らの思考を分析すると、問題点が浮かび上がってきます。

では、ここで多くの人が共感できる形で想像してみましょう。

ある家に、親御さんと子供が居ました。
子供は次の日に大事な約束があるので親御さんに、明日は6時に起こしてくれ、と約束をします。

そして翌日。
母親(もしくは父親)が子供の部屋へ約束通り起こしに来ます。

子供はねぼけ眼の状態で自分はもう起きたんだ、と言うイメージだけで
「わかってるよ!」と答えてしまいます。
しかし現実にはまだ起き上がっていないので、またすぐに寝てしまいます。

5分後、優しい親御さんは「まだ起きないの?」と再び起こしに来ます。
子供は「もう!わかってるから!!」と自信満々。

そして10分後、15分後…同じ問答が繰り返されて、気が付けばもう7時半…

多くの人がお子さん、あるいは親御さんの立場で思い当たるのではないでしょうか。
この、よくあるたとえ話に改めて向き合ってみましょう。

この話では子供が、頭の中では自分は既にできた!起きられた!と思い込んでいることに原因があります。
つまり「分かる」あるいはその前の段階でありながらも、
自分では「できる」段階にいるのだと錯覚しているのです。

現実とは異なる、この「分かる~できるのギャップ」こそがこの話で最大の要点と言えるでしょう。

子供は、現実の課題としては「分かった」と「できた」のギャップを埋め、昇華していなければいけない。
言い換えるなら、その子供は目が覚めるのではなく、
実際にベッドから身体が起き上がっていなければいけなかったのです。

「知る」から「やる」へ昇華する具体的な方法

残念な事に、この”なにかをしようと思った人”から”実際に行動を起こす(「やる」に到達できる)人”
へ発展できる割合はたったの20%程度だと言われています。

この「知る」から「やる」、そして「できる」へと発展していく為には、兎にも角にもまず行動するよりほかにありません。

では、どうしたら
”やると言ってやらない人”=”「分かる」段階から「できる」段階へのギャップが埋まっていない人”
は重い腰を上げて「やる」段階へと成長できるでしょうか。

・とりあえず5分(あるいは1回)実践してみる

勉強は嫌だ!と思いながらも実際に机についてみたら意外と30分、1時間、と捗った経験はありませんか?
「分かる」から「やる」へのハードルが高いのなら、まずは「やる」のハードルを最低限まで下げてみましょう。

・「やる」のハードルを更にもう一段下げる

5分でもまだ腰が重い、最初の一歩が踏み出せない…という事であれば、まずは「できるところまで」ハードルをその人に合わせていきます。
たとえば「5分勉強する」のも厳しい人でも、「5分椅子に座って机に向かう」ならできる筈です。

商談やプレゼン前のロールプレイも、この一種に当たると言えます。

・「できた」時のメリットを提示する

行動を起こさない人の中には、そもそもやる気がない人も多いです。
そのケースの人にはどれだけ「やりなさい」と背中を押したところで、本人はやる事に価値を感じていないためなかなか動きません。
反対にこのタイプはやる気になった途端別人のように行動すると言う合理主義的な一面も持ち合わせているため、今の行動や経験がどのように仕事、評価、そしてゆくゆくはキャリアに影響してくるかを具体的に明示する必要があります。

・成功したかどうかに関わらず、挑戦したことを評価する

成功を求められる現場では忘れられがちですが、挑戦したかどうかは非常に重要な要素です。
「実際に行動をすること」は、(仮に失敗したとしても)いずれ成功へ至るために必要不可欠な過程なので当然「正しい行い」です。次の段階へと繋げるためにも忘れずに評価するようにします。

・中短期的に評価し合う職場環境をつくる

「やる」ことを評価するためには、そもそも「挑戦」「実践」を評価するよう職場の空気を変えるところから始める必要があります。
挑戦している人だけでなく、日頃から小さな行いや感謝を口に出して評価し合う環境づくりを社内全体で習慣づけましょう。

やらない人の変化は周囲にも影響する

持っていただけの知識を、己のスキルとして身に着けることは大きな自信に繋がります。

せめて見かけだけでも良く見られたい、取り繕いたい、と言う一心で”口だけ”だった人にとって、この自信は普通の人以上に大きく感じるものです。

そしてそれは今までモチベーションを下げていた周囲の人間との関係を修復し、職場環境全体の改善にも繋がります。

もし身の回りに”口だけの人”がいたら、「実際にやってみよう」と背中を押してあげましょう。

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